PMA-SX1はデノンのこれまでのSシリーズと同様に、全段バランス構成とし、BTL接続により出力を得ています。スピーカーのプラス、マイナス両端子をパワーアンプの出力段により直接駆動するため高いドライブ能力を発揮することができます。また、スピーカーのドライブ電流がグラウンド回路に直接流れ込まないため、増幅の基準となるグラウンド電位が安定しノイズや回路間の干渉が低減され正確な増幅が行えます。また、内部電圧を低く抑えられるため、低電圧用の優れたデバイスも使用可能になり部品選択の幅が広がります。その結果、にじみのないリアルな空間表現を可能にし、活き活きとした躍動感あふれる音楽表現を可能にしています。
MC / MMそれぞれに専用入力端子を備えたフォノイコライザーには3個並列接続されたデュアルFET差動入力回路のヘッドアンプを備えたCR型イコライザー回路を搭載。NF型の課題である低域と高域での音色の違いが出ないフラットな再生が可能です。MC入力端子には入力インピーダンス切替も装備。「DL-103」に代表される中~高インピーダンスのカートリッジの他、海外ハイエンドブランドのカートリッジに代表される2~10Ω程度の低インピーダンスカートリッジにも最適な入力インピーダンスで対応します。CR素子には厳選された高音質部品を採用。のびやかで素直な音質でアナログレコードの音を堪能できます。また、イコライザー回路はPHONO入力を選択したときのみ電源が入る仕様となっています。CD等を再生する場合には、電源がOFFになり他の回路への影響を最小限に抑えるよう工夫を施しています。
様々な入力機器へ対応するため極性切替スイッチ付のバランス入力端子を装備しました。国産製品に多い3番HOTにも輸入製品に多い2番HOTにもリアパネルのスイッチを切替えるだけで対応できます。
アンプの動作とは入力信号を電源回路から供給される電流に“拡大コピー”するようなものです。電源電流が汚れていればその汚れの上に信号のコピーが乗ることになり、また電源から十分な電流が供給されなければコピーが途中で切れたりゆがんだりする、つまり正確な増幅が出来ないことになります。
PMA-SX1では、その出力からすると大きすぎるともいえる電源トランスを搭載し、出力段用と電圧増幅段用には何度も試作を繰り返し慎重に吟味された低倍率箔使用の高音質デノン・カスタムブロック型コンデンサーをそれぞれ採用しています。トランスの専用捲き線から独立電源として供給され、アンプ回路の要求する汚れのないクリーンな電流を十分に流せる強力な電源回路を構成しています。
電源トランスはアンプのパワーの源であり、同時に不要振動やノイズの発生源でもあります。PMA-SX1では、従来のSシリーズ同様砂型アルミ鋳物のケースに特殊樹脂を充填して電源トランスから発生する振動を排除、また入念な磁気シールドによって漏洩磁束に起因する筐体内のノイズを抑制しクリーンな電源供給を行っています。均一に余裕をもって巻かれた極太の巻き線を持つトランスはクリアで力強いサウンドを生み出します。
出力段は微小領域から大電流領域まで極めてリニアリティが優れているという特徴を持つUHC-MOS(Ultra High Current MOS ) FETを用いたシングルプッシュプル構成です。多数の素子を並列駆動して大電流を流す手法ではどうしても素子の性能のバラツキが問題となります。1ペアという最小単位の素子による増幅は「POA-S1」の開発以来、「繊細さと力強さ」を高い次元で両立するためのデノンが磨き上げてきた伝統的な手法です。新採用のUHC-MOS FETは従来品に比べ、定格電流が30Aから60Aに、瞬時電流は120Aから240Aへと倍増され、一段と余裕を持った再生を実現しています。さらに、カスコードブートストラップ接続によりUHC-MOSのドレイン、ソース間電圧を一定に保ち、電圧に依存する増幅率(伝達アドミタンス特性)を安定化してアンプ回路全体の動作を安定させています。
音楽再生時のピュアネスをさらに進化させるため、プリアウト、トーンコントロール、バランスコントロール、ヘッドホン出力は装備しておりません。音楽信号の経路となる内部配線は最短化し、OFC(無酸素銅線)を使用。信号伝送時のロスを排除しています。ボタンやつまみなどの操作部や筐体デザインについてもシンプルに徹し、PMA-SX1の開発コンセプトである「シンプルかつ高性能」を徹底しています。
バランス、アンバランスどちらの入力信号も変換回路を用いずにダイレクトにバランス構成の電圧増幅段に入力されるバランスダイレクト設計。インバーテッドΣバランス回路は低ひずみ率、高SN比を実現し、バランスアンプでありながらシンプル、ストレートな信号経路を実現可能にしています。
フロントスピーカーの共用など、ホームシアターシステムとの併用に便利なゲイン固定入力「EXT. PRE」入力端子を装備。AVアンプ等のプリアウト出力と接続してご使用いただけます。
重心を下げたハイブリッドレイヤー構造によるシャーシに電源部を設置。内部の振動発生源をフットの近くに配置しグラウンドに振動を逃がしています。トランス、大型ブロック電解コンデンサー、整流ダイオードには異種素材を用いたフローティング処理を施し、増幅回路への振動の伝播を排除するとともに外部から流入する振動から電源回路を守っています。
さらに、「PMA-SX」にも採用された鋳鉄製のフットを採用。また風穴寸法を微妙に調整し共振周波数を分散したトップパネルなど細部に至るまで防振、整振を徹底しています。このような徹底した振動対策によりピュアな再生を実現しています。
ボリウムには多接点ワイヤブラシを採用したオーディオグレードのモーター式ボリウムを採用。デノンがこだわり続けるアナログ式ボリウムは入力バッファ回路が不要であるため、デジタルボリウムに比べて、よりシンプルな回路構成に出来るというメリットがあります。また構造においても、外部振動、外来ノイズの混入を排除するため最大15mm厚の堅牢なフロントパネル、削り出しの円筒状アルミカバー、そしてアルミ無垢材の削り出しノブ採用により音質劣化につながる要素を徹底的に排除しています。
重厚感を醸し出す最大15mm厚のアルミ無垢のフロントパネルは、その外観のためだけではなく音質のために生み出されました。ボリウムつまみの周囲には琥珀色に輝くイルミネーションを装備し、一層存在感を際立たせるデザインとなっています。このイルミネーションは明るめ、暗め、OFFの3段階の調整が可能です。
スピーカー端子はPMA-SXでも採用された、Yラグから極太ケーブルまでをしっかりと締め込むことができる大型端子を装備。横一列に配置することにより、接続をよりスムーズに行えるようになりました。
デノンはこれまでハイエンドアンプはリモコン非対応としてきました。それは、少しでも音質に影響を与える可能性のある要素は極力取り入れないという方針からです。しかしながら、時代の移り変わりとともにユーザーの皆様からのご要望を多くいただくようになったため、PMA-SX1はリモコン対応としました。もちろん音質への影響を避けるため、アンプを操作していないときはマイコンへの電源が完全にOFFとなるマイコンストップモードを搭載しました。
リモコンでは、電源オン/スタンバイ、音量調節、ミュート、入力切替の操作が可能になり、使いやすさが大きく向上しました。また、このリモコンでデノン製CDプレーヤーを操作することもできます。
■ プリアンプ部
■ 総合特性
■ 総合